外部の右腕を入れた最初の90日|「決まった型」がない理由を、2つの実例で話す
この記事の要点
外部の右腕を入れた最初の90日に、決まった型はありません。導入ゼロの商品なら市場に受け入れられるかの検証から、すでに売れている商品なら営業の仕組み化から――やるべきことは事業のフェーズで全く変わるからです。この記事では、フェーズの違う2社の実例をそのまま話します。共通していたのは、週1回以上社長と話すこと、考えたらその週のうちに売りに行くこと、1人で支援しないこと。この3つだけです。
最初に正直に言うと、「90日の型」はありません
「導入したら、最初の90日で何をしてくれるんですか?」。よく聞かれる質問ですが、正直に答えると、決まった型はありません。30日で現状分析、60日で戦略策定、90日で実行開始――そんなきれいなフレームワークは資料の上では書けますが、現場はそう動きません。やるべきことは、その会社の事業がどのフェーズにいるかで全く変わるからです。
抽象論で説明するより、実例を見てもらうのが早いと思います。私が実際に支援してきた、フェーズの全く違う2社の話をします。
ケース1:導入ゼロの新サービス。「売れるのか」の検証から始めた90日
支援前の状態
支援を始めたのは約1年半前。AIを活用したHR領域のサービスを開発した会社で、商品はほぼ完成し、社長が顧客にプレゼンする資料も一応ある。しかし導入実績はゼロ社、サービス価格も決まっていないという状態でした。社長は商品を企画する力に非常に長けた方でしたが、営業出身ではなく、これをどう世の中に広めるかのイメージを持てずにいました。
最初の90日でやったこと
最初にやったのは、戦略資料づくりではありません。社長の商談への同席です。社長が自分のネットワークで取り始めていたアポに同席し、まず「社長がどういう商談をしているのか」を聞きました。その上で、私自身のネットワークからこのサービスが刺さりそうな会社を挙げ、一緒に売りに行きました。この段階の目的は受注ではなく、この商品が本当に市場に受け入れられるのかの検証です。
並行して、社長の営業を改善しました。当時は社長が一方的にプレゼンするスタイルだったので、「まず顧客の状況を聞きましょう」と、商談の冒頭で確認すべき7つの質問から設計し直し、営業資料も細かく直しました。
手応えが見えたところで、獲得の仕組みに移ります。私の外部人材ネットワークからインサイドセールスの得意なプロ人材を連れてきて、ターゲットを絞った営業を開始。AIも使って「刺さる可能性が高い業種・業態」の仮説を立て、担当者名まで特定したリストを作り、手紙を送り、電話でアポを取り、取れたアポは社長が商談する。この分業を組み上げたのが最初の90日でした。90日後の変化はシンプルで、初めての導入が数社、決まりました。
その後どうなったか
正式なサービス開始は昨年の夏。1年後のいま、導入社数は60社を超え、正社員の営業1名と業務委託の営業5名、インサイドセールスの仕組みが回り、複数の獲得経路から月に50〜100件の商談機会が生まれる体制になっています。「売れるのか」を検証するフェーズはとうに終わり、毎月の売上目標を追ってスケールさせる段階です。私の仕事も変わりました。いまは資本業務提携先の開拓や、大口エンタープライズ企業の開拓に軸足を移しています。右腕の役割は、固定ではなく事業と一緒に変わっていくものです。
ケース2:すでに商品が売れている会社。契約の半年前から始まっていた支援
支援は「無料の壁打ち」から始まった
2社目は、スキルを測定するテストサービスを提供する会社です。契約して支援を始めたのは今年の4月ですが、実際の関係はその半年前から始まっていました。社長から相談を受け、NDA(秘密保持契約)を締結した上で、契約を前提にしない壁打ちを、2ヶ月に1回ほど、計5回。「最悪契約に至らなくても、壁打ち相手としてどうぞ」というスタンスです。
この半年があったので、契約初日の時点で、年商・利益・社員数・顧客数・案件数・主力商品・商談状況・解約率・価格設計まで、事業の数字はすべて共有されている状態でした。ケース1のような「検証の90日」は必要なく、初日から実行に入れたわけです。
最初の4ヶ月でやったこと
私の入り方は、事業開発兼営業責任者の代行です。まず着手したのは、社長に偏っていた営業事務の巻き取りでした。インサイドセールスのスタッフを1名入れ、商談まわりの事務作業をスタッフに移し、あわせてAIツールとNotionで営業状況の可視化と蓄積を仕組み化しました。商談そのものもこれから徐々に私が引き取り、営業の解像度をさらに上げた上で、いずれは営業の正社員を迎えて仕組みごと引き渡す計画です。加えて、検索やAI検索への対策が弱かったので、対応できる会社を私のネットワークから連れてきて、導入事例づくりと合わせて着手しているところです。
正直な現在地
4ヶ月で導入社数が増えまくっているかというと、全くそんなことはありません。すぐに売れる性質の商品ではなく、ここは正直にそう言います。ただし、誰をターゲットに、どういう営業手法で獲得すればいいかはもう見えました。あとはやり切ってスケールさせるだけ、という地点までは来ています。90日で売上が跳ねる話を期待した方には物足りないでしょうが、これが実際の事業の進み方です。
断っておくと、実際の仕事はもっと幅広い
ここまで、分かりやすさを優先して営業と事業開発の話に寄せて書きました。ただ正直に言うと、実際にやっていることはもっと幅広いです。
どちらの会社でも、マネージャー以上が集まる会議には参加し、システム開発やオペレーションの状況も理解した上で、改善できることがあればどんどん口を出します。社長とは経営戦略、組織、人材、資金調達まで幅広く話します。要するに、私にできることは何でもやるスタイルです。「何でもする、何にでもなる」と別の記事で書いた通り、右腕の仕事は領域で区切れるものではありません。
2つのケースに共通していた、3つのこと
フェーズも打ち手も全く違う2社ですが、共通していたことが3つあります。
- 週1回以上、必ず社長と話す。頻度が信頼と意思決定のスピードを作ります
- 考えたら、その週のうちに売りに行く。私は戦略だけ考えるのが好きではありません。完璧な計画より、顧客の反応が一番速い教材です
- 1人で支援しない。インサイドセールス、検索対策、その局面ごとに「この仕事ならこの人」というプロ人材のネットワークを組み込みます。右腕1人の稼働時間ではなく、右腕が連れてくる実行力まで含めて使うのが、正しい使い方です
「90日プラン」を語る人より、「まず確かめたい」と言う人を
最後に、これから右腕を探す方へ。面談で「最初の90日のプランを教えてください」と聞いたとき、事業を見る前からスラスラと美しいプランが返ってきたら、少し疑ってください。誠実な答えは、おそらくこうです。「まだ分かりません。最初の1ヶ月で、御社の商談と数字を見て確かめさせてください」。面談で確認すべき10の質問と合わせて、見極めに使ってもらえたら嬉しいです。
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