新規事業が進まない本当の理由|「責任者不在」をどう埋めるか
この記事の要点
新規事業が進まない本当の理由は、アイデア不足でも資金不足でもなく、多くの場合「専任の責任者がいない」ことです。既存事業と兼任の責任者は、必ず既存事業に時間を吸われます。責任者の本当の仕事は、戦略を実行可能な粒度まで分解する「ディテール化」。埋め方は内部登用・幹部の雇用・外部の事業責任者の3択で、スピードと撤退のしやすさで選ぶなら外部が合理的です。
止まっている新規事業には、共通点がある
「新規事業をやりたいが、進まない」。この相談を受けて中身を見ると、驚くほど共通のパターンがあります。アイデアはある。予算もある。キックオフもした。それなのに、3ヶ月後に進捗を聞くと「本業が忙しくて」と止まっている。
原因はアイデアの質でも市場でもありません。その事業に、専任で責任を持つ人がいない。これがほぼすべてのケースの根本原因です。
兼任責任者が機能しない、構造的な理由
多くの会社は、新規事業の責任者をエース社員の兼任で置きます。これが機能しない理由は、本人の意欲とは無関係です。
既存事業には、今日の売上と今日の顧客がいます。新規事業には、まだどちらもいません。兼任者の時間は、緊急度で必ず既存事業に吸われます。しかも新規事業の初期は成果が見えにくいので、社内評価も既存事業側で稼ぐことになる。合理的に行動する社員ほど、新規事業への配分は減っていきます。兼任は制度設計の時点で負けているのです。私自身、事業会社の事業開発部長として複数の新規事業と法人子会社の立ち上げを主導しましたが、進む事業と止まる事業を分けたのは、いつも専任の推進者の有無でした。
責任者の本当の仕事は「戦略のディテール化」
では専任責任者は何をする人なのか。事業計画を書く人でも、進捗を報告する人でもありません。本当の仕事は、戦略を実行可能な粒度まで分解することです。
例えば「飲食店向けにサービスを売る」という戦略は、まだ何も決めていないに等しい。業態は? 客単価帯は? 店舗数は? 既存で何を使っていて、何に困っている一群か? ここまで分解して初めて、「この一群には高い確率で刺さる」と言える営業リストと訴求が作れます。お客さん像を1ミリ細かくする——営業件数を倍にするより、この解像度上げのほうが成果に直結します。
実際、過去の支援では顧客理解を深めた結果、当初想定していたターゲット業界そのものを大胆に変える判断に至り、成果につながったケースがあります。この判断は、片手間の兼任者にはできません。顧客の声を聞き、数字を見て、仮説を毎週更新する専任の時間があって初めて可能になります。
責任者不在を埋める3つの選択肢
| 選択肢 | 強み | 注意点 |
|---|---|---|
| 社内からの登用(専任化) | 事業と顧客への理解が深い。成功すれば次期幹部が育つ | 既存事業から本当に切り離せるかが全て。中途半端な専任化は兼任と同じ結果になる |
| 事業開発経験者の雇用 | フルコミットの推進力 | 獲得に半年〜1年。未検証の事業のために高い固定費を先行負担するリスク |
| 外部の事業責任者(事業部長代行) | 最短即日で立ち上げ経験者が入る。検証フェーズが終われば契約を見直せる | フルタイム専属ではない。軌道に乗ったら内部への引き継ぎ設計が必要 |
どれが正解かは事業の確度によりますが、まだ仮説検証の段階なら、外部が最も合理的です。理由は撤退のしやすさにあります。新規事業は途中でやめる・方向転換する判断が必ず発生します。雇用した幹部や専任化した社員はその判断を重くしますが、業務委託の外部責任者なら、事業の検証結果に合わせて体制を軽く畳めます。うまくいかないときに形を変えやすい体制こそ、新規事業には合っています。雇用と外部の詳しい比較はこちらの記事で解説しています。
最初の90日でやるべきこと
責任者を置いたら、最初の90日は市場の解像度上げに全振りします。顧客インタビュー、既存の商談・失注理由の分析、ターゲットの因数分解、小さな検証営業。この期間に「誰に・何を・なぜ勝てるのか」を1ミリ単位まで具体化できれば、その後の投資判断は格段に楽になります。逆にここを飛ばして体制やツールから作り始めると、精巧な砂上の楼閣ができあがります。
新規事業の責任者を、外部から入れるという選択肢
NEXTSTANの代表・鈴木は、事業開発部長として複数の新規事業立ち上げと法人子会社設立を主導してきました。専任責任者として入り、ターゲットの因数分解から検証営業、社内への引き継ぎまでを担います。
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